Cinematelier ─ 映画のアトリエ

名作からコア作品まで、余韻を大切に綴る映画ノート

『インスタント・ファミリー 〜本当の家族見つけました〜(Instant Family)』― 不完全だからこそ、家族になれた

 

家族とは何でしょうか。

血のつながりでしょうか。それとも同じ家で暮らすことでしょうか。

『インスタント・ファミリー 〜本当の家族見つけました〜』は、養子縁組を通して突然3人の子どもたちの親になることになった夫婦の奮闘を描いたハートフルコメディです。

コメディとして笑える場面が多い一方で、里親制度や養子縁組、親と子の心の距離といった現実的なテーマにも真摯に向き合っています。

観終わったあとには、きっと「家族とは何か」を改めて考えたくなる。そんな温かさに満ちた一本です。

 

あらすじ

リフォーム会社を経営するピートとエリーのワグナー夫妻は、ある日親戚から「君たちは子どもを授からないだろう」と言われたことをきっかけに、養子縁組について考え始めます。

養子縁組説明会に参加した2人は、当初は幼い子どもを迎え入れるつもりでした。しかし、そこで出会った15歳の少女リジーの「誰も10代の子どもを養子にしようとしない」という言葉が心に残ります。

やがて夫妻は、リジーだけでなく弟のフアン、妹のリタを含めた3人きょうだいを迎え入れることを決意します。

しかし、子育て経験のない夫妻にとって、突然3人の親になることは想像以上に大変なものでした。

わがままなリタ、繊細なフアン、そして心を閉ざしたままのリジー。

さらに、服役中だった実母の存在も家族の関係に大きな影響を与えていきます。

果たして彼らは、本当の家族になることができるのでしょうか。

 

感想

※ここからは作品の核心に触れる内容を含みます。

正直なところ、最初は気軽に楽しめるファミリーコメディだと思っていました。

しかし実際に観てみると、本作はアメリカの里親制度や養子縁組の現実にしっかり目を向けた作品でした。

もちろん重苦しい社会派ドラマではありません。

笑いを交えながら描いているので非常に見やすいのですが、その中には確かな現実があります。

特に印象的だったのは、10代の子どもが養子に選ばれにくいという問題です。

リジーが言う「大人たちは10代の子どもを養子にしようとしないんだ」という言葉は、軽いセリフのようでいて非常に重く響きます。

多くの人は幼い子どもを望みます。

しかし、年齢を重ねた子どもたちにも当然ながら愛情を必要としている現実があります。

本作はそんな見落とされがちな問題に優しく光を当てています。

また、この映画が素晴らしいのは、子どもたちだけでなく実母カーラの気持ちにも目を向けているところです。

カーラは決して完璧な母親ではありません。

薬物依存の問題を抱え、子どもたちを育てられなかった過去があります。

それでも子どもたちを愛していないわけではありません。

その複雑な感情が描かれていることで、単純な善悪の物語になっていませんでした。

特に終盤、カーラが子どもたちを引き取れないと認める場面は胸が痛みました。

親として失格だったのではなく、親でありたいのに親になれなかった人の悲しさが伝わってきます。

一方でワグナー夫妻も最初から理想的な親ではありません。

むしろかなり自分本位な部分もあります。

子どもたちを迎えれば自然と家族になれると思っていた節もあります。

しかし彼らは失敗しながらも逃げませんでした。

子どもたちが問題を起こしても、反抗されても、何度傷ついても向き合い続けます。

だからこそ終盤の法廷シーンや、リジーがようやく心を開く場面には大きな感動があります。

家族とは最初から存在するものではなく、時間をかけて築いていくもの。

本作はその当たり前だけれど大切なことを改めて教えてくれました。

コメディでたくさん笑わせながらも、温かくもある作品でした。

 

演技

マーク・ウォールバーグ(ピート役)

コメディセンスと父親としての不器用さを見事に表現していました。笑わせる場面も多いですが、子どもたちを守ろうとする姿にはしっかり説得力があります。

ローズ・バーン(エリー役)

本作の感情面を支えている存在です。母親になろうと必死にもがく姿がとても自然で、共感を呼びます。

イザベラ・モナー(現:イザベラ・メルセード)(リジー役)

本作最大の発見でした。反抗的なティーンエイジャーでありながら、本当は誰よりも傷ついている少女を繊細に演じています。終盤の涙のシーンは特に素晴らしかったです。

オクタヴィア・スペンサー(カレン役)

重くなりがちなテーマをユーモアで包み込む存在でした。作品全体のバランスを支える重要な役どころです。

 

この映画がおすすめなひと

  • 心温まる家族映画が好きな方
  • 『ワンダー 君は太陽』が好きな方
  • 子育てや家族の在り方について考えたい方
  • 笑いと涙のバランスが良い作品を探している方
  • 養子縁組や里親制度に興味がある方

 

評価

※評価は執筆時点のものです。

  • Filmarks:★★★★☆(4.0/5.0)
  • IMDb:★★★★☆(7.3/10)

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