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名作からコア作品まで、余韻を大切に綴る映画ノート

『ジュディ 虹の彼方に(Judy)』―「Over the Rainbow」の向こう側で、それでも歌い続けた理由

 

『オズの魔法使』で世界中を魅了した少女、ジュディ・ガーランド。その歌声は時代を超えて愛され続けていますが、その輝きの裏には、ハリウッドという巨大なシステムに人生を翻弄された一人の女性の姿がありました。

『ジュディ 虹の彼方に(Judy)』は、彼女の晩年を描きながら、スターとしてではなく、一人の母親であり、一人の女性として生きようともがいたジュディ・ガーランドの人生を映し出した伝記映画です。

主演のレネー・ゼルウィガーは圧巻の歌唱と演技でジュディそのものを体現し、本作でアカデミー賞主演女優賞を受賞しました。華やかなショービジネスの裏側と、一人の人間の孤独を静かに描き出す、心に深く残る一本です。

 

あらすじ(ネタバレなし)

16歳のジュディ・ガーランドは、MGM製作のミュージカル映画『オズの魔法使』で主人公ドロシーに抜擢され、一躍世界的スターとなります。しかし、その華々しい成功の裏で、スタジオから痩せ薬としてアンフェタミンを飲まされ、睡眠さえ制限されるという過酷な環境で働かされていました。

それから約30年後。

1968年、ジュディは二人の幼い子どもたちを抱えながら経済的に困窮し、ホテル代すら払えない生活を送っていました。親権問題も抱え、子どもたちとの生活を守るため、ロンドンでの長期公演を引き受ける決意をします。

長年の薬物依存や不眠症、不安障害に苦しみながらも、舞台に立てば観客を魅了する歌声は健在でした。しかし、公演の成功とは裏腹に、ジュディの心は少しずつ限界へと近づいていきます。

人生最後の輝きとなるロンドン公演を通して、一人のスターが何を守ろうとしていたのかを描く感動作です。

 

感想

※ここからは作品の核心に触れる内容を含みます。

本作を観て最も胸が締め付けられたのは、「スターである前に、一人の少女だった」という当たり前の事実です。

『オズの魔法使』の主役に抜擢されたジュディ・ガーランドは、夢を叶えた少女として世界中から愛されました。しかし、その裏では、大人たちによって自由を奪われ、商品として扱われ続けていました。

劇中では、睡眠時間を削るためにアンフェタミンを飲まされ、食事まで管理される様子が描かれます。

本来なら学校へ通い、友人と遊び、恋をする年齢だった少女は、「スターであること」を強制され続けます。

その経験が彼女の人生を大きく狂わせてしまったことは想像に難くありません。

現在でも子役や若いスターが精神的な問題を抱えるケースは少なくありませんが、1930年代から40年代のハリウッドでは、スタジオが俳優の人生そのものを支配していた時代でした。

今でもこのような搾取は完全になくなったとは言えませんが、当時はなおさら深刻だったのだろうと思うと、とても胸が痛みました。

映画はジュディを決して聖人として描いてはいません。

遅刻を繰り返し、公演に穴を開け、お酒や薬に依存し、人間関係もうまく築けません。

それでも不思議と彼女を責める気持ちにはなれませんでした。

その背景を知ってしまうからです。

幼い頃から普通の人生を送ることを許されなかった彼女が、大人になって普通の生活を築けなかったのは、ある意味では当然だったのかもしれません。

ロンドンで出会う二人のゲイ男性との交流も、本作の大きな見どころです。

社会から理解されず孤独を抱えていた彼らにとって、ジュディは希望そのものでした。

一方で、ジュディ自身もまた孤独でした。

スターとファンという関係を超えて、お互いが「理解者」として心を通わせる場面は、本作の中でも特に温かな時間だったように思います。

そしてラスト。

「Over the Rainbow」を歌いながら涙で声を詰まらせるジュディ。

歌えなくなった彼女を、観客が歌で支える場面は涙を誘います。

「私のことを忘れないでくれる?」

スターが観客へ投げかける最後の願いは、名声ではなく「忘れられたくない」という、一人の人間としての切実な想いでした。

それに対して観客が歌を返す姿は、映画というより、一つの人生への感謝そのものだったように感じます。

ショービジネスは夢を与える世界ですが、その夢を作るために誰かが犠牲になってしまうこともあります。

本作は、ジュディ・ガーランドという伝説のスターを称えるだけでなく、ショービジネスそのものへの静かなアンチテーゼとしても強く印象に残る作品でした。

 

レネー・ゼルウィガーという"ジュディ"

本作最大の魅力は、何と言ってもレネー・ゼルウィガーの演技です。

外見を似せるだけではなく、歌い方や立ち振る舞い、笑顔の裏に隠れた不安、舞台袖で震える姿まで、まるでジュディ本人がそこにいるかのようでした。

特に歌唱シーンは圧巻です。

モノマネではなく、自身の表現としてジュディを生き切ったからこそ、多くの観客の心を動かしました。

アカデミー賞主演女優賞受賞も納得の名演だったと思います。

 

この映画がおすすめなひと

・実話をもとにした伝記映画が好きな方
・『オズの魔法使』やジュディ・ガーランドを知っている方
・ショービジネスの光と影を描く作品に興味がある方
・俳優の圧倒的な演技を味わいたい方
・切なくも温かな余韻が残る作品を観たい方

 

評価

※評価は執筆時点のものです。

Filmarks:★★★★☆(3.7 / 5.0)

IMDb:★★★★☆☆☆☆☆☆(6.8 / 10)

 

視聴情報(サブスクリプション)

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ジュディ 虹の彼方に(字幕版)

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