- あらすじ(ネタバレなし)
- 感想
- 演技
- ジェシカ・チャステイン|メイソン・“メイス”・ブラウン
- ペネロペ・クルス|グラシエラ・“グラシー”・リベラ
- この映画がおすすめなひと
- 評価
- 視聴情報(サブスクリプション)
CIA、BND、MI6、DNI、そして中国の情報機関。
それぞれ違う国、違う組織に所属し、違う事情を抱えた女性たちが、世界を危機に陥れるひとつのデバイスを追っていきます。
2022年公開の『355(The 355)』は、ジェシカ・チャステイン、ペネロペ・クルス、ダイアン・クルーガー、ルピタ・ニョンゴ、ファン・ビンビンという豪華な顔ぶれが集結したスパイ・アクション映画です。
最大の見どころは、やはりこのキャスティングでしょう。
ジェシカ・チャステインを中心に、タイプのまったく異なる女性たちが同じ目的のために手を組んでいく姿には、『オーシャンズ8』をはじめとした女性アンサンブル作品を思わせる華やかさがあります。
派手な銃撃戦や格闘、世界各地を舞台にしたスパイ映画らしいスケール感。
そして、それ以上に印象に残るのは、国籍も性格も立場も違う女性たちが、少しずつひとつのチームになっていく過程です。
あらすじ(ネタバレなし)
コロンビアで、世界中のあらゆるデジタルシステムにアクセスできる恐るべき暗号解読デバイスが開発されます。
航空機や電力網、通信システムなど、現代社会を支えるあらゆるインフラに侵入できるそのデバイスが犯罪組織の手に渡れば、世界規模の混乱を引き起こしかねません。
CIAのエージェント、メイソン・“メイス”・ブラウン(ジェシカ・チャステイン)は、同僚で長年のパートナーでもあるニック・ファウラー(セバスチャン・スタン)とともに、デバイスを確保する任務を命じられます。
しかし、パリで行われた取引にドイツ情報局BNDのエージェント、マリー・シュミット(ダイアン・クルーガー)が介入したことで事態は一変。
任務は失敗し、メイスは大きな代償を払うことになります。
デバイスを取り戻すため、メイスは旧知のMI6エージェントで、サイバーインテリジェンスを得意とするハディージャ・“ディジ”・アデイェミ(ルピタ・ニョンゴ)に協力を求めます。
さらに、戦闘経験のないコロンビアDNIの心理学者グラシエラ・“グラシー”・リベラ(ペネロペ・クルス)、そして当初は敵対していたマリーも加わり、異なる国の情報機関に所属する女性たちは、やがて共通の目的のために行動することになります。
誰が味方で、誰が敵なのか。
国家や組織の思惑が交錯するなか、彼女たちは世界を揺るがすデバイスを追って、国境を越えた危険な任務へと踏み込んでいきます。
感想
※ここからは作品の核心に触れる内容を含みます。
『355』を観てまず感じるのは、やはりキャストの豪華さです。
ジェシカ・チャステイン、ペネロペ・クルス、ダイアン・クルーガー、ルピタ・ニョンゴ、そしてファン・ビンビン。
これだけ個性の異なる俳優たちが一堂に会し、それぞれの得意分野を持つエージェントとして世界を飛び回る。その構図だけでも十分に華があります。
どこか『オーシャンズ11』や『オーシャンズ8』のような、スターが集結する映画ならではの楽しさを感じました。
ただ、観終わったあとには少し消化不良感も残りました。
素材はとても魅力的なのに、それを十分に使い切れていないように感じたからです。
本作で面白いのは、単純に「男性スパイを女性に置き換えた映画」になっていないところです。
特にそれを象徴しているのが、ペネロペ・クルス演じるグラシーです。
彼女は情報機関に所属しているものの、本職は心理学者であり、メイスやマリーのような戦闘のプロではありません。
銃撃戦になれば怖がりますし、家にいる夫や息子のことを心配します。
その反応は、この映画の中ではむしろ一番「普通の人」に近いものです。
だからこそ、グラシーがいることで、銃弾が飛び交うスパイの世界の異常さが際立ちます。
全員を超人的な女性エージェントにしなかったところは、本作の良い部分だと思います。
物語が進むにつれて浮かび上がってくるのは、「国家のために戦う」という単純な構図ではありません。
メイスたちはそれぞれCIA、MI6、BND、DNIといった組織に所属しています。
しかし、その組織の内部にこそ裏切り者がいる。
メイスが信頼していたニックは生きており、さらに敵側の人間だったことが判明します。
そして上司のマークスまでクラーク側につながっていました。
つまり彼女たちが最後に頼ることになるのは、所属する組織ではなく、最初は敵だった女性たちなのです。
ここが『355』のテーマとして一番面白いところではないでしょうか。
国家も組織も絶対ではない。
肩書きではなく、その人間自身を信じられるかどうか。
最初はデバイスを奪い合っていたメイスとマリーたちが、最後には互いの命を預ける仲間になっていきます。
セバスチャン・スタン演じるニックの裏切りは、物語の大きな転換点です。
メイスにとってニックは単なる仕事仲間ではありません。
長年行動をともにし、互いに好意を抱きながらも、その距離を完全には縮められなかった相手です。
そのニックの「死」がメイスを動かしていたにもかかわらず、実際には彼自身が裏切り者だった。
メイスにとっては、任務上の裏切り以上に個人的な裏切りだったはずです。
しかし興味深いのは、ニックに裏切られたことで、結果としてメイスが新しい仲間を得ることです。
ひとりの男への信頼を失った彼女が、国籍も所属組織も違う女性たちとの信頼を築いていく。
そう考えると、本作は「誰を信じるのか」という物語でもあります。
一方で、ここが本作の惜しいところでもあります。
せっかくこれだけ魅力的なキャラクターが揃っているのですから、それぞれの背景や関係性をもう少し深く描いてほしかったです。
特に後半から本格的に物語へ加わるリンは非常に魅力的なキャラクターですが、他の4人と比べるとチームとして過ごす時間が短く、5人が本当の意味でひとつになったという感覚が少し弱く感じられます。
そこをもう少し丁寧に描いていれば、後半の悲劇や彼女たちの結束がさらに強く響いたのではないでしょうか。
世界を揺るがすデバイス、各国の諜報機関、裏切り、上海の闇オークションと、物語に盛り込まれている要素が多いため、人物描写に十分な時間を割けなかった印象があります。
ストーリーについては、ニックの展開を含めてスパイ映画として比較的王道です。
世界を支配できるほど強力なデバイスという設定も、現実味よりエンターテインメント性を優先したものです。
そのため、緻密な諜報戦やリアリティのあるスパイ映画を期待すると、少し物足りなさを感じるかもしれません。
「豪華な俳優たちが世界を飛び回るスパイ・アクションを楽しむ映画」と割り切って観れば、十分楽しめる作品だと思います。
期待していたほど人物ドラマが深くなかったという意味では、個人的にも少し消化不良感が残りました。
それでも、この5人でもう一度別の任務を観てみたい。
そう思わせるだけのキャラクターの魅力はありました。
演技
ジェシカ・チャステイン|メイソン・“メイス”・ブラウン
本作の中心にいるのは、やはりジェシカ・チャステインです。
メイスは任務に忠実で、生真面目で、簡単には他人を信用しない人物です。
チャステインはその強さを、単なる「強い女性」として演じるのではなく、ニックとの関係や裏切りを通して見えてくる脆さも含めて表現しています。
格闘や銃撃戦でも存在感があり、スパイ・アクション映画の主人公として画面を引っ張る力があります。
特にニックが生きていたことを知り、さらに彼が裏切り者だったと分かる場面では、驚きだけではなく、信じていた人間に裏切られたメイスの感情が伝わってきます。
アクションだけでなく感情面でも作品の軸になっていました。
ペネロペ・クルス|グラシエラ・“グラシー”・リベラ
個人的に印象に残ったのは、ペネロペ・クルス演じるグラシーです。
彼女は他のメンバーとは明らかに違います。
心理学者であり、戦闘のプロではありません。
突然銃撃戦に巻き込まれれば怖い。
家族が危険にさらされれば動揺する。
当たり前の反応をする人物です。
ペネロペ・クルスは、その恐怖や戸惑いを決して弱さだけには見せません。
戦えないからこそ、人の心を理解するという別の能力を持っている。
タイプの違う女性たちを集めた本作において、グラシーの存在がチームに人間らしさを与えていました。
この映画がおすすめなひと
- 女性たちが活躍するアクション映画が好きな方
- 『オーシャンズ8』のような豪華キャストの共演を楽しみたい方
- ジェシカ・チャステインやペネロペ・クルスが好きな方
- スパイ映画や国際的な陰謀を描く作品が好きな方
- 難解すぎないテンポの良いアクション映画を観たい方
- タイプの異なる登場人物がチームになっていく物語が好きな方
評価
※評価は執筆時点のものです。
Filmarks:★ 3.5 / 5.0
IMDb:★ 5.6 / 10
視聴情報(サブスクリプション)
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