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名作からコア作品まで、余韻を大切に綴る映画ノート

『Love, サイモン 17歳の告白(Love, Simon)』― 息をひそめていた僕が、ようやく恋を始める日

 

青春映画にはさまざまな形があります。

恋に悩む物語、友情が揺らぐ物語、自分探しの物語。そして『Love, サイモン 17歳の告白』は、そのすべてを優しく包み込んだ作品です。

主人公サイモンが抱えている秘密は、自分がゲイであるということ。しかしこの映画は、その秘密を重苦しく描くのではなく、一人の高校生が恋をし、友人とすれ違い、家族に支えられながら成長していく青春ドラマとして描いています。

笑いあり、切なさあり、そして観終えたあとには自然と笑顔になれる。そんな温かさに満ちた一本です。

 

あらすじ(ネタバレなし)

アメリカ・ジョージア州アトランタで暮らす高校生サイモン・スピアーには、誰にも打ち明けられない秘密がありました。

それは、自分がゲイであるということ。

家族にも親友たちにもその事実を隠しながら過ごしていたサイモンは、ある日学校の掲示板で「ブルー」と名乗る匿名の同級生の投稿を目にします。ブルーもまた、自身がゲイであることを周囲に隠していました。

サイモンは「ジャック」という偽名でブルーにメールを送り、二人は少しずつ心を通わせていきます。

しかし、そのメールの存在を同級生のマーティンに知られてしまったことで状況は一変。秘密を守る代わりに友人アビーとの仲を取り持つよう脅され、サイモンは友人たちとの関係にも嘘を重ねることになってしまいます。

ブルーは誰なのか。

そしてサイモンは、自分自身の本当の気持ちを大切な人たちに伝えることができるのでしょうか。

 

感想・考察

※ここからは作品の核心に触れる内容を含みます。

この映画が素晴らしいのは、「ゲイであること」を特別なテーマとして扱いながらも、その根底には誰もが共感できる青春映画が流れていることです。

サイモンが抱えている悩みは性的指向に関するものですが、本質的には「本当の自分を人に見せるのが怖い」という誰もが経験する感情です。

だからこそ、彼がブルーとのメールに一喜一憂しながら恋をしていく姿はとても愛おしく映ります。メールが届くたびに期待し、返信を待ち、相手の正体を想像する。まるで初恋の頃の気持ちを思い出させてくれるような描写でした。

一方で、マーティンによるアウティングは本作の大きな転換点です。

本人の意思を無視して性的指向を暴露する行為がどれほど残酷なのかを、この映画は決して説教臭くなく、それでいてしっかりと描いています。

クリスマスに家族へカミングアウトする場面は胸が締め付けられました。サイモンは誰よりも家族を信頼していたはずなのに、自分の口から伝える機会を奪われてしまった。その喪失感がとても切実に伝わってきます。

しかし本作はそこで終わりません。

むしろ、その後に訪れる家族との対話こそがこの映画の核だと思います。

サイモンの両親は理想的すぎるほど理解のある存在かもしれません。それでも彼らはサイモンを「ゲイの息子」としてではなく、「サイモン」という一人の人間として愛しています。

特に母エミリーの言葉は、この映画を象徴する名シーンでした。

サイモンは長い間、自分の本心を隠しながら生きてきました。母親はその息苦しさをずっと感じ取っていたのです。そして「もう息を吐いていいのよ」と伝える。

この言葉には、性的指向の問題を超えて、自分らしく生きることへの許しと祝福が込められていました。

また、リアの片思いやブルー自身の葛藤など、サイモン以外のキャラクターにもそれぞれ切なさがあります。

だからこそ終盤、サイモンが勇気を出して観覧車でブルーを待つシーンには特別な感動があります。

高校中の注目を浴びながら待ち続ける姿は、かつて秘密を抱えていた少年とはまるで別人です。

そしてブルーの正体がブラムだと明かされる瞬間。

派手な演出ではありませんが、その静かな幸福感は何とも言えません。二人が観覧車でキスを交わすラストには、「ようやく自分らしく生きられるようになった」という解放感が詰まっています。

アウティングやネット社会の問題など現代的なテーマを扱いながらも、決して重くなりすぎず、最後には希望を残してくれる。

だからこそ本作はLGBTQ+映画という枠を超え、多くの人に愛される青春映画になったのだと思います。

 

印象に残った台詞・シーン

母エミリーがサイモンに語りかける場面

「もう息を吐いていいのよ、サイモン。あなたはこれから、長い間できなかったくらい自分らしく生きていける。そして、あなたは望む幸せを手にする資格があるの。」

このシーンは本作の感情的なクライマックスのひとつです。

サイモンの苦しみを責めるのではなく、ずっと見守ってきた母親が優しく受け止める。その言葉には親の無条件の愛情が詰まっています。

観覧車でのラストシーンも素晴らしいですが、個人的にはこの母子の会話こそが作品の心臓部だと感じました。

 

演技

Nick Robinson(サイモン役)

本作の成功は彼の存在抜きには語れません。サイモンの不安や恋する喜び、秘密を抱える苦しさを自然体で表現しています。観客が最後まで彼を応援したくなるのは、ニック・ロビンソンの誠実な演技があってこそです。

Jennifer Garner(エミリー役)

出番は決して多くありませんが、母親としての優しさと包容力が圧倒的です。カミングアウト後のシーンは本作屈指の名演でした。

Josh Duhamel(ジャック役)

父親としての戸惑いと愛情を丁寧に表現しています。終盤の父子の会話には大きな温かさがありました。

Katherine Langford(リア役)

報われない恋心を抱えるリアを繊細に演じています。サイモンとの友情と恋愛感情の間で揺れる姿が印象的でした。

Alexandra Shipp(アビー役)

明るく魅力的でありながら、孤独も抱えているアビーを好演。物語の潤滑油として重要な存在でした。

Keiynan Lonsdale(ブラム役)

登場シーンは多くありませんが、終盤の存在感は抜群です。ブルーの正体が明かされた瞬間の幸福感を見事に作り上げています。

Miles Heizer(カル役)

友情を支える存在として作品に温かさを与えています。自然な演技が作品全体のリアリティを支えていました。

 

この映画がおすすめなひと

  • 爽やかな青春映画が好きな人
  • 心温まるラブストーリーを観たい人
  • LGBTQ+をテーマにした作品に興味がある人
  • 『ブックスマート』や『レディ・バード』のような青春映画が好きな人
  • 家族の愛情を描いた作品が好きな人
  • 観終わったあと幸せな気持ちになりたい人

評価

※評価は執筆時点のものです。

  • Filmarks:★★★★☆ 4.0 / 5.0
  • IMDb:★★★★☆ 7.5 / 10

視聴情報(サブスクリプション)

※配信状況は変わる場合があります。
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  • ディズニープラス
  • Amazon Prime Video

 

 

関連作品:『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー(Booksmart)』

『Love, サイモン 17歳の告白』が好きな方にぜひおすすめしたいのが、『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』です。

一見すると、こちらは女子高校生コンビが卒業前夜に大騒動を巻き起こすコメディ映画。しかし、その根底にあるのは「自分らしく生きること」や「他人を決めつけないこと」という、『Love, サイモン』とも共通するテーマです。

『Love, サイモン』ではサイモンが本当の自分を受け入れていく姿が描かれましたが、『ブックスマート』でも登場人物たちは周囲が抱くイメージと現実とのギャップに向き合いながら成長していきます。

また、『ブックスマート』にはLGBTQ+のキャラクターがごく自然に描かれており、その扱い方にも時代の変化を感じさせます。誰かの性的指向を特別視するのではなく、一人の高校生の恋愛として描いている点は、『Love, サイモン』と通じる魅力と言えるでしょう。

笑いと青春、そして少しの切なさ。観終わったあとに温かい気持ちになれる作品を探しているなら、この二作品はきっと良い組み合わせになるはずです。

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